医療スタッフと島民の気持ちを「miruco」がつないでくれる
並木 宏文 先生
目次
- 医療スタッフと島民の気持ちを「miruco」がつないでくれる
- 看護師の活用事例
- 離島で「miruco」を使う意味
【医療スタッフと島民の気持ちを「miruco」がつないでくれる】
インタビュー動画(約5分)
■ 医療現場を変えた「miruco」 コミュニケーションが活性化
「miruco」を購入する以前は、非常に重要な判断や治療方針を決めるときに設置型の大きなエコーを使用していました。つまり、離島で起こる様な危険な病態の確認や適切な判断を必要とするときに、診療所内で医師のみがエコーを使用していたのです。
ところがポケットエコー「miruco」を導入してからは、医師にかぎらず、看護師、介護士などもコミュニケーションの増加に繋がるような使い方をすることが増えてきたのです。
看護師は「エコーが使えるんだ!これで、より良い看護ができるようになる」と、仕事に対するモチベーションが高まりました。また、私もそんな看護師と接するなかで「一生懸命やろう」という意欲が高まり、皆、気持ちの良い仕事ができる様になりました。
また「miruco」を使うことで患者さんとの対話がとても増えました。画像を患者さんと一緒に見て「こうなってるね」「先生はこうゆうことをしているんだね」など、コミュニケーションを密にとりながらの診察ができるようになりました。
医療現場のこうした変化は私たち医療スタッフにとってはもちろん、それ以外の皆にとっても非常に嬉しいことでした。
■ 「miruco」は人の垣根を越えていく新しいコミュニケーションツール
< 医師の活用事例 >
医師という立場は、社会的に少し敷居が高く思われがちですが、それは与那国島でも同じです。人によっては「医師=神様」だと崇める方もいます。しかし実際は医師も一人の人間なんですね。やはり私たちも、島民の皆さんとコミュニケーションをとりながら一緒に暮らしていきたいのです。そのためには、まず自分の周りにいる看護師や介護士、保健師などと共に様々な物事に取り組んだり、考えたりすることが非常に大事でした。
「miruco」を一緒に触ったり、覗きこんだりするのは、実は新しいコミュニケーションの形なのです。そして、このようなコミュニケーションが繋がっていくと、皆がもっと気持ちよく話をしたり、島民のこと、患者さんのことを考えられるようになるのではないかと思います。医師にとって、このように人の垣根を越える様な「miruco」の使い方は、とても新しいものなのでは?と感じています。
■ 糸数事務課長:島のためになると購入を決断 時代の変化を実感
まず驚いたのは価格と大きさですね。持ち運びが簡単にできるということに一番驚きました。「この価格ならば購入できる、島のためにもなる」と考えました。島で生まれ育った私としては、特に在宅医療で活用できるところが気に入りました。しかも、医師ではなく看護師が手軽に在宅の患者さんに使用できる点が、驚きと同時に嬉しかったです。「時代はこんなにも進んでいたのだなあと」mirucoを見て実感しました。
■ 内原医師(研修医):どこでも手軽に使用できるから状態を素早く判断できる
与那国島に地域医療研修として着任しています。最初に「miruco」を持った感想は「スマートフォンと間違えるくらい小さい」ということでした。「miruco」を使用する一番のメリットは、コンパクトなので使う場所を選ばないため、診察室のどこでも使えるという点です。研修中に何度も使用する機会があり、患者さんが脱水症状になっていないか、胃腸炎になっていないかなど、素早く判断する機器として役に立っています。
【看護師の活用事例】
インタビュー動画(約3分)
■ 優しい気持ちを表現するためにポケットエコー「miruco」を活用
「miruco」は、離島でも看護師に広く使っていただいています。皆さんも経験があると思いますが、外来や在宅で「先生、看護師さん、点滴してほしいんだ。ちょっと辛いんだよ」といった声を聞くことも良くあるのではないでしょうか。こうしたとき、皆さんは、どのような気持ちで患者さんの言葉を受け止めていますか?
「今日は点滴をする時間がないから、しなくても良いだろう」と考えることもあるでしょう。「今日も明日もずっと支えるために点滴してあげよう」と考えることもあるでしょう。ですが「miruco」を使って膀胱を見たときにお小水が溜まっていれば、それだけで医学的、看護学的な観点から点滴は必要ないのではないか?という判断をすることができます。そして、大切なことは、そこからさらに一歩踏み出して、「先にトイレに行ってから点滴をしてみようね」と、より優しい気持ちになって患者さんに接することではないでしょうか。当院の訪問看護師も日々そうした優しい気持ちを持って働いています。「miruco」は看護師が持つ優しさを表現することを可能にするツールなのです。
実際に、このような観点で看護師がケアをしたことがありました。あるとき、80歳のおばあさんから「熱中症になったかもしれない」との電話がありました。その方は毎年熱中症を訴える方で「入院した方が良いのだろうか?家族のいるところに戻った方が良いのだろうか?」といつも心配をしていた方でした。訪問看護師が自宅を訪問すると、少しグッタリしていましたが、汗をたくさんかいていて「どうかな?点滴が必要かな?」という状況でした。実際に「miruco」を使って膀胱を見てみると、お小水がたくさん溜まっており、足下にも、たくさんのお水があって、しっかりと水分を摂っているようでした。看護師は「点滴は必要ないのでは?」と感じたようです。
しかし看護師は次のように話しかけました。「まずトイレに行きましょうか?それから点滴しようね」と。この看護師は「miruco」を使い的確な状況判断をした上で、さらに一歩踏み込んだ優しい対応ができたのかもしれません。皆さんもこのようなやり方で、自分のやりたいと考える看護を目指してみるのも良いのではないでしょうか?
【離島で「miruco」を使う意味】
インタビュー動画(約3分)
■ 「miruco」がもたらした変化 「皆で協力する」という想いを形に
沖縄の離島では昔から言い伝えられている言葉があります。「離島医療の質は医師で決まる」これは離島に勤めた医師の体験や経験から伝わる大事な言葉で、離島医療の歴史を表すような言葉だと考えられています。ですが、実際は医師一人にできることは非常に限られています。医師だけではなく、看護師、事務員、さらに島民一人ひとりが離島医療について考え、皆で支えているのです。「少ない資源を有効に活用したい」「皆で協力したい」という様に、島民が手を取り合って診療所、医師を助けるという状況が与那国島では今も続いているのです。
安価で使用しやすい「miruco」は、こうした目に見えない気持ちをより見える形にしてくれます。「miruco」は我々離島の住民が持っている「皆で協力する」という気持ちを実現させるコンセプトを持っていたのです。
■ 安心して島で暮らすためにエコーを介して“見える”つながりを作る
< 今後の活用について >
私たちが目指す医療のひとつに「患者さんと対話を続ける」ということがあります。その実現のためには、エコーを利用して実用性の高い”見える”つながりを作ることが非常に重要です。
救急車のない与那国島には消防団がいます。この消防団がエコーを利用できれば、あるいは新たな介護資源としてエコーを利用できれば、またエコーを用いて島外の方と情報を共有することができれば、そしてエコーを使って静かに看取りができるようになれば、きっとそこには、島民が安心して暮らせる新しいつながりができることでしょう。「エコーを手にして安心して島で暮らす」ことを目指して、島民の皆と対話を続けていきたいと考えています。
※ご所属・役職等はインタビュー当時のものとなりますのでご了承ください。
日本最西端の離島でエコーを活用したヘルスケア基盤形成を目指す
与那国島は沖縄県にある日本最西端の離島です。与那国町診療所は人口1700名の島民を、医師1名、看護師3名、事務2名の体制で24時間365日、決して休むことなく医療的な面も含めて支え続けています。離島特有の環境だけではなく、離島民の持つ思いや与那国特有の歴史を踏まえた最適な医療を行えるよう、人間同士の繋がりを意識した“ゆいまーるの心”を意識しながら活動を続けています。
現在は、エコーを活用したネットワークの構築を積極的に行い、島民が「安心して暮らす」ために何ができるだろうかと皆で考え、より良いヘルスケアの基盤、繋がりの形成を目指しています。
※ゆいまーる:お互いに助け合うこと、助け合いの精神
(取材協力:与那国町診療所)