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お客さまの声
2021.04.01 お客さまの声

医療システムの変革とmirucoの役割

山梨市立牧丘病院

古屋 聡 先生

目次
  • 医療システムの変革とmirucoの役割
  • IoTとしてのmiruco

【医療システムの変革とmirucoの役割】

インタビュー動画(約7分)

■ 医療システムの変革と医療リソースの有効活用におけるポケットエコーの役割

今までの医療の在り方やシステムが根本的に変わろうとしていく中で、「エースとしてエコーがある」というのが我々の感覚です。

現在、日本の医療の運営主体が各自治体(都道府県)に渡されて、更に地方に分けられるという時代になりました。そうなると各自治体や地域のリソースの違いにより、医療の形態が大きく異なってくるであろうことが想像されます。医師や看護師の多い所や少ない所で、どのように医療が行われ評価されるか?といったことについて、日本全国で様々な形態が見られるようになると思います。

そのような中で、医師自身がやらなければならない、あるいはやらなければならないと思っていたことを、看護師や他の職種の方がやれることで医師の負担がなるべく少なくなっていくことや、あるいは医師に正確な情報が伝わり判断だけを求められるようになれば、医師の少ないところでも非常に医療が機能しやすくなると思います。このような点でポケットエコーmirucoはとても役立つと思います。

■ エコーの進むべき道 ~いつもポケットにエコーを~

医師はもちろん据え置き型のエコーも使っていますが、診察室の中で聴診器を当てたりするのと同じレベルでエコーを使っている医師は未だ多くはないと感じています。

据え置き型のエコーを常に使う癖をつけていくと、整形外科的な部分だけでなく、心臓・腹部・肺でも、どこの部位でもすぐに聴診器と同ようにエコーを当てるようになると思います。ただ、据え置き型のエコーでは部屋から離れると使うことができなくなってしまいます。

これは、裏を返せば、いつでも手元にポケットエコーがあれば、どこにいてもエコーを当てて見られるということでもあります。「手元にエコーが無い」と焦りエコーを当てずに進んでしまうよりも、「いつもポケットにエコーを」というのが今後の道だと思います。

診断・診療のために検査室に行っていたエコーが、今では診察室にやって来るようになりました。さらにこれからは、一人一台で正にスマートフォンのように使うという時代になってきていると認識しています。

■ 医師から多職種への時代へ!情報共有によるケアの自立と即時性の向上

「エコーを医師以外の職種の方が使う」という広がりも欠かせません。看護師・介護士・PT(理学療法士)などがエコーを使うと、それぞれの職種が自分の見たものや興味のあるものを更に深く見ていけるようになり、そのことを通じて医師にフラットな意見を言えるようになります。

それは、色々なカンファレンスであったり、日常の医師との会話の中で、血圧や体温のことを自然に話しているのと同ように、エコーの所見に基づいて話すことができるようになることを意味します。エコーの情報というのは客観的な画像や動画であるため正確性が高く、医師はフラットな立場で判断できて、指示ができるようになります。さらに特筆すべき点は、その指示は「医師が現場で患者を診察してから改めて出す」といったものではなく、後追いの指示にすることができるということです。診療の即時性があがり、看護師が医師の到着を待って判断、指示を仰ぐといった手間を省くことができるため、このようなポケットエコーの使い方は、病棟と外来という比較的近い環境でも非常に有効だと考えます。

これは何も病棟の看護師に限った話ではありません。訪問看護師がポケットエコーを持つと、医師が病院にいて訪問看護師が患者の自宅にいる場合でも、即時にエコー画像や動画の共有ができるようになるわけですから、より一層効果が得られると思います。

また、特別養護老人ホームの様な施設においても同様です。看護師がエコーを使って得た情報をそのまま医師に伝えることができれば、わざわざ患者を搬送したり、施設に行かなくても、医師の診断に基づいた正しい処置ができるようになります。

こういったことは現実に可能なことであり、もはや「どの現場にもエコーを」という時代が来ていると思います。

■ 患者-医療者、多職種間の対話と振り返りを促すmiruco

医師は自分の診断を「話しを聴く」「患者に触る」「聴診器を当てる」といった行為を通して固めていきます。そして自分の診断の確かさを、血液検査や他の画像検査を用いて確認していくのですが、最もフィードバックの能力が高いツールは、実はエコーだと思います。

エコーの機種によっては血流や組織の硬さについても視覚化して直接見ることができますが、自分が診た部位にエコーを当ててどの様な所見が得られるのか、直接画面を見ながら確かめていけるということは、自分の手や耳での所見を目で見るエコーに置き換えて自分の能力を高めることができるということです。それはすなわち、医師としての“腕”は「エコーとの対話」で磨かれると言い換えても良いでしょう。

一方で、エコーの所見を元に医師と患者がフラットな立場で対話できると、患者は「ここが痛い」「ここが悪そうだ」ということに対して自分で見たエコーで語れるようになるかもしれません。

また、患者も自分の身体をエコーを通して見ていくことで「私の痛いのはこうなんだ」「腫れているのはこうなんだ」といったように、自分の症状と対話できるようになります。患者は、エコーを通して医師との対話だけでなく、自分の身体とも対話できるようになるのです。

さらにポケットエコーmirucoは深い所から浅いところまで様々なところを選んで、目で見ることができます。片手に持てるサイズなのでどこにでも持ち運びでき、使う場所を選びません。そして何より安価なため、より多くの方に行き渡る可能性が高いのではないでしょうか。

以上のことから「様々な対話を促進できる」というのがポケットエコーの価値であり、新しい使い方ではないかと考えています。

【IoTとしてのmiruco】

インタビュー動画(約5分)

■ 医療情報の民主化革命と医師の役割の変化

ポケットエコーmirucoは“革命”を起こしていると言えるでしょう。

与那国町診療所の並木先生もインタビューで述べていたように、今までの医療情報は医療従事者のもので、医療のことは医療従事者だけが知っていました。ところが、現在では沢山の書籍や皆が知りたいと思っていた知識がインターネットで簡単に手に入るようになりました。

数年前まではインターネットで入手できる知識はあまり優れていないと思われていましたが、現在ではエビデンスレベルの十分な知識が完全にインターネットで入手できるようになったので、患者でも、誰でも、知識を使える人は、医師より先に正しい知識を入手してしまうことになります。これは知識が医療従事者だけのものではなく、患者も同じものを持つようになったということを意味します。

これは血圧や体温といったバイタルサインにも言えることで、血圧計も体温計も今では店頭で当たり前に売っていますが、昔は医療従事者だけのものでした。それが技術の進歩により、患者もバイタルサインを自分のものとして知ることができるようになったのです。

そして今やエコーの画像が患者のものになりつつあります。エコーが圧倒的にハンディーになり、なおかつタブレット型が出て正にスマートフォン化し、しかも安価になったので、やろうと思えば全て患者と共有できるようになりました。

このような状況では、医療従事者の役割も変わってくるでしょう。これまでの医療従事者は、「特別な医療知識を持ち、その知識を患者に教えてあげる」といった立場でした。しかし、これからの患者は様々な医療知識を持っているいるため、医療従事者が患者に教えてあげるのではなく、「どの知識を取捨選択して適用していくかを患者に示して行く」といった役割になるのではないでしょうか。

バイタルサインもエコーで見える事柄も、もともとは患者のものです。それをどのように考えて、どのように医療の知識を使いながら健康に向けていくのか、という課題に対するナビゲーターとして医師の役割は今後変わっていくだろうと思います。

まとめるならば、現在は、元々患者に属するものが、医療従事者に占有されないものになる先駆けの時代であり、そのかなめとなる部分をエコーが担っている、というのが我々の認識です。

■ ビッグデータ時代におけるIoT端末mirucoの未来

今、医療情報や生体情報が個人で見えて、その情報について医療従事者と対話でき、皆と共有できるようになっているという話をしてきました。これを私は「医療の現場が民主的になっていく」と表現しています。この医療の民主化の流れの次にやってくるのは、これらの情報が瞬時にマスの情報として認識される未来だと思っています。

現在、災害でビッグデータの活用の可能性が示唆されていますが、もし災害が起こったときに十分なインターネット環境が確保できていれば、どこの道を通って逃げれば良いか?どこの電気がダメでどこの避難所が良いかという情報が即座に集められるようなことが現実に可能になっています。

この技術を応用すれば、感染症の情報を一挙に共有したり、困った患者がどこで生まれているかといったことを、地域の中やもう少し広いエリアの中で瞬時に判別することもそう遠くない未来に可能になると思います。

エコーの情報についても、個人の情報をクラウドでまとめながら分析を行い、地域全体の健康が良い方向に進んでいくように、あるいは災害時においては、該当地域に暮らす方々に向けた対策をいち早く取れるように役立てることもできるはずです。

このような活用を想定したとき、これまで以上に求められるのはリテラシーであって、情報を適正に扱うためのルールを皆が学んで、混乱にならないような使い方を考えていくのが重要になってきていると感じます。

※ご所属・役職等はインタビュー当時のものとなりますのでご了承ください。


「病院が拠点」という強みを生かす牧丘病院

人口約1万人の診療圏で外来を行い、山梨市・甲州市・笛吹市の人口約8万人の圏域で、現在月に250~300名くらい訪問診療を行っています。牧丘病院は在宅医療で訪問している患者さんのバックベッドとしての役割が強いため、急性疾患の患者さんよりは比較的落ち着いている患者さんが多いという特性があります。病床を持っていることにより、地域の在宅医療に関する相談に対応できることがあり、また、外来や地域二次救急当番を受け持っていることで、他の病院や診療所との関わりが多いため、何かあった時に協力し合いやすい関係性にある施設です。

(取材協力:山梨市立牧丘病院)