mirucoを実際に使ってみて
看護師 上野 美幸さん
目次
- 事例① 適切な膀胱観察からのアセスメントにより心不全の兆候を早めに察知
- 事例② 膀胱内尿量を確認することで適切な導尿処置が可能に
- 事例③ 夜間の頻尿を的確にアセスメント 前立線肥大の内服薬調整に
事例① 適切な膀胱観察からのアセスメントにより心不全の兆候を早めに察知
■ 患者さん:女性(90歳代) 脱水、食欲不振で入院
夜勤交代時「バルーン留置中、医師より点滴3本で絶飲食の指示」と申し送りがありましたが、2本目の点滴が終了している時点で、排尿パックに尿が全く貯まっていませんでした。患者さんの容態を見ながら3本目の点滴が必要なのか?追加点滴した場合には患者さんにこれ以上の負荷がかかってしまうのでないのか?と考えて「miruco」で膀胱を観察しました。
結果、膀胱にまったく尿がたまっておらず、患者さんの容態は喘鳴があり、少しむくんでいる印象、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)の数値は90%台前半くらいでした。そこで、「miruco」の画像と合わせて患者さんの状況について医師に報告したところ、「3本目の点滴はやめて、利尿剤の投与をしよう」との判断となりました。早い段階で画像を通して情報の共有化ができたことで患者さんへの症状の悪化や不必要な負担を回避できました。
「miruco」を使用したおかげで心不全の兆候を早めに察知でき、適切に対応できたケースです。
事例② 膀胱内尿量を確認することで適切な導尿処置が可能に
■ 患者さん : 女性(90歳代) 認知症、食欲不振で入院
入院後、ADL(日常生活動作)が回復されてきたので前日にバルーンを抜去していました。夜勤の申し送りでは「朝から尿が出ていないので、様子を見ておいてください」とのことでした。日勤での患者さんへの摂取した水分量やトイレへの誘導についての明確な記録がされていませんでした。夕食もしっかりとっていただき意識して水分摂取もしていただきました。消灯時間になっても、患者様がトイレに行くそぶりもなく、声かけをして確認をしたところ本人から尿意はなくトイレにも行きたくないとの返答でした。気になったので腹部を確認したところ朝からトイレに行っていない割には張りも感じられませんでしたが、もしかしたらと思い「miruco」で膀胱を確認しました。するとポケットエコーの研修会で習った排尿するタイミングである300nlほど尿量が認められました。そこで「miruco」の画像を患者様にお見せしながら、膀胱に尿が貯まっていることを説明してトイレへの誘導をしました。トイレに座っても、腹圧をかけてみても尿が出なかったため、一時的にカテーテルで導尿することで適切な処置が行えたケースでした。
今までは、患者さんの経過観察と視診、触診などで判断し導尿を行った結果、尿が出なかったというケースもありました。今回は「miruco」を使用することで、画像を通して患者様へ状態を説明するだけでなく確実なアセスメントにより様々な看護処置を施した上で適切な導尿処置を行うことができた事例だと考えています。
事例③ 夜間の頻尿を的確にアセスメント 前立線肥大の内服薬調整に
■ 患者さん:男性(90歳代) 肺炎で入院
夜間はポータブルトイレを使用されていますが、転倒リスクのある患者様なのでセンサー対応をしていました。ある夜、センサーマットが鳴ったので訪室すると、トイレに行くために起き上がられていました。トイレ介助を行いその際に約300mlの排尿を確認しました。すると30分程たった後に、またセンサーマットが鳴り、訪室すると尿意があるとのこと。認知症が進行しているのか、本当に尿がたまっているのかを考え「miruco」で尿量を確認することにしました。すると150~200mlの尿量が貯まっていたので排尿してもらいました。
この患者様は、前立線肥大症があり薬を服用していましたが、残尿があることがわかりましたので医師に夜間の排尿状況を報告。夜間での負担も鑑みて内服薬の調整に進んだケースです。
今までであれば、前立腺肥大症での薬の服用があることで患者様がしっかりした排尿の確認後に再び尿意を訴えても認知症の影響かと判断してしまいがちです。さらには夜間の負担があるのではないかと考え場合によっては睡眠薬を使用することもあります。今回は「miruco」で膀胱の状況が確認できたおかげで、内服治療を見直すきっかけを作ることができました。結果的に患者様だけではなく夜間のスタッフの負担軽減にもつながりました。
※ご所属・役職等はインタビュー当時のものとなりますのでご了承ください。
「病院が拠点」という強みを生かす牧丘病院
人口約1万人の診療圏で外来を行い、山梨市・甲州市・笛吹市の人口約8万人の圏域で、現在月に250~300名くらい訪問診療を行っています。牧丘病院は在宅医療で訪問している患者さんのバックベッドとしての役割が強いため、急性疾患の患者さんよりは比較的落ち着いている患者さんが多いという特性があります。病床を持っていることにより、地域の在宅医療に関する相談に対応できることがあり、また、外来や地域二次救急当番を受け持っていることで、他の病院や診療所との関わりが多いため、何かあった時に協力し合いやすい関係性にある施設です。
(取材協力:山梨市立牧丘病院)